| 第2回憲法シンポジウム報告 |
|
九条・教育・緊急事態を焦点に熱心な討論を展開! ―国会議員3名、ご参加 |
|
去る11月19日(日)、心斎橋大陽ビルにおいて、本会は「九条・教育・緊急事態から憲法を問う」と題して第二回憲法シンポジウムを開催した。今回は5月3日に開催した「憲法調査会へ府民からの要望を!」と題した第一回のシンポジウムに引き続いて、更に九条・教育・緊急事態の問題に絞って、大阪選出の国会議員にご提言頂き、議論を深めるとともに参加者からの質疑にも意見交換をして頂くものであった。 パネリストは、折りから国会で内閣不信任案をめぐり混乱を招いている中で国会議員の出演が危ぶまれたものの、参議院議員(自民党)で憲法調査会所属の谷川 秀善氏、衆議院議員(民主党)で憲法調査会所属の中野 寛成氏が最初から、衆議院議員(自民党)の塩川 正十郎氏が討論の途中から出演された。また、国学院大学教授で日本会議政策委員会代表の大原 康男氏にもパネリストとして加わって頂いた。司会は本会運営委員で大阪新樹会幹事の塚本 英樹氏が担当した。 会場は本会会員の他、熱心な一般府民の方々も来られ約250名、場内満杯となり、改めて憲法について関心が高いことを物語っていた。 まず討論に入る前に、各パネリストより約20分間に提言を頂いた。谷川氏は、9条・緊急事態について、「この憲法が占領下に制定されたので、緊急事態が想定されていなかったことはやむを得なかった。当時、憲法草案者は改正されることを前提として憲法を起草したにもかかわらず、戦後、改正されなかった理由は改正条項の厳しさもあるが、東西対立による冷戦構造があったこと、いままで解釈憲法で乗り切って来れたことが大きい。しかし、社会情勢の変化により既に無理があること、特にゴラン高原に派遣されている自衛隊員を激励に行った折りに、機関銃二丁のみと避難用の防空壕があるだけで、自らも守ることができない事実があった。これは明確に自衛隊を戦力と認めない九条に問題がある。また、周辺有事の場合などに明確に対応するためには、集団的自衛権を認めなければならない。緊急事態は、内閣総理大臣の権限について考えなくてならない。」と述べた。 続いて中野氏は教育について、「まず個人としては改憲の立場であるが、党では論憲の立場である。教育基本法のような教育の国家的精神を盛り込んだ基本法は民主国家にはほとんどなく、ロシア、中国のような左翼全体主義の国に多い。むしろ教育の基本となるものは憲法の中に書き込むべきである。たとえば、アメリカ、フランス、イギリスでは教育のアクションプログラムをつくっているが、日本でも抽象的な概念よりも学校のシステムのあり方、教員養成のあり方など、教育システムをしっかりつくって、具体的に学校現場や社会の荒廃、核家族化の中で、育児の方法がわからなくなっている母親の悩みなどを解消するために保育所に育児相談の場所を設けるなどした方がよい。即ち、教育基本法の改正というよりも、教育改革のプログラムこそつくって実行することが必要だ。ただし、憲法でも私学助成についてははっきりさせた方がいい。」と述べた。 次に大原氏は、憲法全体の問題点について、「最新の毎日新聞の世論調査でも、憲法改正した方がいいの43%が改正しない方がいいの13%を大きく上回っている。その意味ではこの憲法が世界で十三番目に古く、また一回も改正されていないのは実に面妖で奇怪な状況である。」と述べられ、欧州各国憲法調査団団長の中山 太郎氏の「憲法が不磨の大典ではなく、現実の社会の中で生きていること、しかも政治的に具体的な課題がまさに憲法の条文を巡って、公明正大に議論されていることを、訪問した5ヶ国全てに該当していることを共通に認識したと思われる。」の談話を紹介し、世界の常識を強調された。そして憲法の問題点として、現憲法には「朕は、日本国民の総意に基づいて、新日本建設の礎が、定まるに至つたことを、深くよろこび、枢密顧問の諮詢及び帝国憲法第73条による帝国議会の議決を経た帝国議会の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。」という上諭があるにもかかわらず、前文には「ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」となっており、憲法が押し付けられたにもかかわらず、法の連続性は保たれなければならないという生い立ちの複雑さがある点、また起草されてから公布されるまで僅か9ヵ月ということもあり形式的にも問題がある点、たとえば前文については、アメリカの憲法、リンカーンのゲティスバーグでの演説、マッカーサー・ノート、テヘラン会談、大西洋憲章、アメリカの独立宣言の件りが糊でつぎ貼ったものとなっており、アメリカ人にとって親しみやすいものとなっているが、それが憲法の正体であると述べられた。そして、「現実に憲法の実態を眺め、この憲法成立の共通の土俵を持たなければならない。」と述べられた。 ここで一旦休憩、参加者には質問用紙に記入頂き、その後、パネリストによる討論に入った。中野氏は9条・緊急事態について、「個別的、集団的自衛権は存在するものと思っているが、その権利を行使できるか否かは政策的判断が必要だ。また、13条の生命、自由及び幸福追及に対する国民の権利より有事法制がないこと自体が憲法違反となると思う。また、ドイツ型の憲法裁判所をつくり、神学論争を排し、有事の場合には有権的解釈をすることも考えるべきだ。」と述べた。 谷川氏は教育について、「戦後、『教える』と『学ぶ』ということが本当にやられてきたのか。子供たちは両親の姿を見て学んできたが、今やまねる手本がおかしくなっているのではないか。その意味では教育基本法の内容は別段おかしくないが、実際の運用が間違ってきたと思う。また、憲法20条により、宗教教育をやって来なかった。宗教と人間をどのように教育するかということが教育では最も大切な問題だ。」と述べられた。 2名の国会議員のこれまでの発言を受け、大原氏は「9条の2項をきちんとすることが必要。それとともに96条の改正条項を変えていくことだが、そのためには民間と国会議員との連携をつくっていくことだ。また緊急事態については、当面、内閣法を変えて内閣総理大臣のイニシアチブを発揮できることを考え、立法や財産処分などの対応をし、国会が事後承認をする法の裏付けが必要と考える。 また、教育については憲法と教育基本法はワンセットのものであり、教育基本法では伝統の尊重の文言が削られた。中野先生がさきほど、教育の基本は憲法に盛り込むべきと言われたが、憲法前文にこそ伝統の尊重を盛り込んだ教育の基本を入れるべきだと思う。また、新しい教育基本法には情操教育についても盛り込むと解釈の誤りもなくなるのではないか。」と意見された。 次に予め、回収した参加者からの質問用紙から、谷川氏には「9条を改正することはわかるが、もっとストレートな意見を聞きたい。」と質問があったが、これに対して「9条2項をはっきりさせ、解釈憲法ではなく集団的自衛権の保有と行使を明記する。」と答えられた。また、中野氏には「アクションプログラムも大切であるが、教育の基本はきっちり定めるべき。愛国心をはじめ、礼儀、礼節を教育の場で基本的な教育活動になりうる教育の法律が必要だ思う。」と質問があったが、中野氏は「愛国心、礼儀、礼節は言葉のあるなしにかかわらず、憲法の底流に流れているものだと思う。従って現在でもそれはできることだと思う。教育基本法は憲法を多く引用し、憲法を補っているものであり、宗教教育もできるはずであり、それをしないのは教育機関の怠慢と思う。また教育基本法は法律だから憲法より変えやすいという指摘はそうかもしれないが、現憲法の制限の中でしか変えられないとなると、いくら変えても欲求不満となってしまうので、憲法に盛り込むとともに学校教育法、社会教育法をきちんとした方がなじむのではないか。ただし民主党としては教育基本法を改正するかいなかということは白紙となっている。」述べられた。 ここで、遅れて加わった塩川氏に憲法全般について意見を求めたところ、平成7,8年に党憲法調査会会長を務められた経験に触れられるとともに、 1.9条は自衛権が本当にあるのか否定されているのか、明確でない、 2.権利と義務の条項については、公共の精神を保有、尊重することを前提とすること、 3.国会が二院制であるために参議院は衆議院のコピー機能だけに陥っていり、かえって政治不信を招いていること、従って参議院の役割を明確にすること、 4.912条の地方自治については地方分権化の流れに沿ったものに変えること、など列挙された。 最後に大原氏は、今後の改正の方向性について言及し、「国会議員だけでなく、民間側がどのような形で世論を形成していくのかが大切となり、今後、憲法調査会の審議期間の四年間には衆参それぞれ2回ずつ選挙があると思うが、次の選挙では憲法問題を焦点として政治が何を求めているのか問うていく中で、国民世論をつくっていきたいと思う。その意味では9条2項の改正に最も力を注ぐべきである。」として、討論を締めくくられた。 以上が、大要、提言、討論内容であるが、まだまだ焦点が絞られているとはいえないまでも、九条・教育・緊急事態という国の根幹に関わる具体的な事象から憲法を問うことではパネリストの認識は一致したのではないかと思う。 今後は、更にこのようなシンポジウムの積み重ねの中で、民間から独自の憲法試案が提案されていくことを期待したい。 当日は、朝日、読売新聞社、関西テレビの取材があり、マスコミの関心も高いことがわかった。 |